第17話 置き土産に触発されて
(お題: 繁華街)
午前中に巣立った3人の部屋を片付け終わった守と美由は、彼らの忘れ物に触発されて久々に街へデートへと向かっていた。
「電車が機能している国は動きやすくて良いわね」
「そうだね、酷い国だと渋滞でまともに動けやしないし」
一年の3分の2は海外で過ごす二人にとっては、きっとここで過ごす人たちよりこの国の移ろいがよく見えている。
貧しくも熱量に溢れた国々を転々としているせいもあるのだろう、清潔ではあるものの帰国する度に少しずつ活気を失っていく母国に「そういうものとは分かっていてもね」と感傷を覚えつつ、向かう先は都心の繁華街だ。
「……これだけは、他の国に負けない気がするよ」
「本当よね……エロにかける情熱は半端ないから、この国……」
幸尚達が変わった性癖に目覚めた(かも知れない)のも無理は無いよね、と嘆息しつつビルまるごとがアダルトグッズショップという奇異な建物の中に入れば、若い人たちでごったがえする店内にこれでもかと並べられた、怪しいグッズの数々。
「こんな可愛らしいバイブもあるのねぇ……ね、ちょっと使ってみたいな」
「だ、大丈夫なのかい?こんなに振動があるものを使っちゃって……」
美由は興味津々にグッズを手に取り、ぽいぽいとかごの中に放り込んでいく。
守ももちろん興味が無いわけではないのだが、これまでこの手のグッズには全く手を出したことが無かっただけにちょっとおっかなびっくりだ。
「あっちも見てみようよ」とどんどん奥に進む妻に連れて行かれた先は、ちょっとおどろおどろしいグッズが並ぶ……いわゆるSMコーナーだ。
美由はその一角に並べられた革製の手枷足枷、さらにビットギャグを臆することなく手に取り「これなら守君にぴったりだね」とかごの中に放り込んだ。
……ああ、やっぱり使われるのは僕の方だよな、と守は心の中で苦笑する。
普段だって夫婦生活には美由の方が積極的で、基本誘って(襲って)くるのは美由の方だ。
自分だってまんざらでは無いから、特に止めることも無いのだけれど。
と、可愛い妻は店員さんに何かを相談しているようだ。
どうやら夫婦のマンネリ解消に良いものは無いかと尋ねているらしい。そうか、最近はワンパターンすぎたのかなとちょっと反省していれば、美由はおすすめされたものを更にかごに追加する。
チラリと見れば、それは他国でもよく見かけるメーカーのオナホとローションという奴で。
「……あのう、美由ちゃん……?」
「ふふっ、ねぇ守君、今日は私がいーっぱい寸止めしてあげるから、ね?そしたら長く楽しめるわよぉ」
「ひぇ」
……あの若い店員、何てことを妻に教え込んだのだと心の中でツッコむも時既に遅し。
「折角帰国しているんだから、今しか出来ないこともやりましょ、ね?」とはしゃぐ妻には勝てないなと、今日は朝まで搾り取られることを覚悟する守なのだった。